「やりづらい」の正体は、“技術不足”ではなく“整理不足”かもしれません
舞台でも映像でも、「この動きって、どこまでやっていいんだろう?」「近すぎたかな?」「相手、平気かな?」という感覚に襲われたことはありませんか?
多くの俳優が、真面目に作品に向き合っているからこそ、こうした不安や気遣いを抱えています。そして、それを“自分の技術が足りないせい”だと考えてしまう人も少なくありません。
でも、じつはその「やりづらさ」、あなたのせいではないかもしれません。
動きが曖昧なままだと、どんなことが起こるのか?
・リハーサルと本番で動きが変わってしまい、謝ったり、謝られたり…
・ 距離感がなんとなくズレて集中が途切れる、モヤモヤする
・毎回、相手の出方を探ってしまって、内容に没入できてない
こうした状態が続くと、演技の集中力もクオリティも落ちてしまいます。 しかも、「不安を我慢すること」に慣れてしまうと、無意識に身体がこわばったり、心が閉じたりしてしまうのです。
では、どうしたらいい?——「整理された動き」と「共有された合意」
インティマシー・コーディネーター(国によってはインティマシーディレクターと呼ぶことが舞台やライブパフォーマンスではあり得ます)が現場に入ると、こうした曖昧さを構造的に整理することができます。
たとえば、
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距離感を事前に決めておく、必要に応じてバミリ
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接触のタイミングや部位を振付として共有する、ダンスのように記録しておく
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演出家の意図を反映しつつ、俳優自身の合意も確認しておく、言語化して誤解を防ぐ。
このように準備が「再現可能」になっていると、演技に集中しやすくなり、毎回の仕上がりも安定します。
例えば、現実の世界でも、いくら楽しみなイベントでも、私たちが交通手段がわからなかったり、必要なツールが自分に備わっているかがわからないと、めんどくさくなってしまったり、楽しみが削がれてしまうのと似ていますね。
「リアルに見える」ほど、実は“整理されている”
実際には、すごく自然に見える演技ほど、入念に構造が組まれているものです。 演技が生まれる余白を保ちながら、ぶれずに繰り返せる動きをあらかじめ設計しておくことで、「その場で生まれたように見える演技」が可能になります。
そして何より、「安心して演じられる」ことこそが、感情の深まりや相手との信頼を育ててくれます。
多くのプロは納得済みですが、リアルというのは、ホームビデオのように現実をただ切り取ったということではありません。
「リアリティー」を関係性であったり状況、そして役に立たせるためには、セリフを入れるのと同じように、またケンカシーンや殺陣をさらっておくのと似たように、キスシーンやハグ、いわゆる絡みのシーンも、準備しておく方が、よりチャレンジしやすくなります。
つまりは、自分がより自分の強みに集中しやすくなることですから、作品全体のためにもなると考えられます。
まとめ:「不安の上に成り立つ演技」から卒業しよう
繰り返しになりますが、あなたが感じていた「やりづらさ」や「演じにくさ」は、決して能力や経験のせいではありません。(演技の実際については、また別で)
もちろん、アクションのシーンでキックの練習が必要であるとか、ダンスシーンで、専門家から安全なジャンプの着地をなら必要もあるでしょう。
しかし、殺陣の先生がそもそもいなかったり、その作品、そのシーン、その役としてのダンスを一緒に考えられる専門家がいなかったりで、ぎくしゃくしていた部分は、このように解決できます。
動きが曖昧なままでいるよりも、整理されて共有された動きに沿って演じることで、本来のあなたの魅力がもっと発揮されます。場合によっては、これまでにない方向に挑めるかもしれません。
「それって、どこまでやっていいの?」と迷ったら。
「なんとなく気まずい」と感じたら。
そのときこそが、インティマシー・コーディネーター(ディレクター)に相談するベストタイミングです。
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