来年は参加させていただいた映画の劇場公開も決定し、楽しみなインティマシーコーディネーター(ディレクター) 鍬田かおるです。
年内のお問い合わせはもちろん、新年度の企画及びご相談も受付中です。オンラインでのヒアリングも実施しておりますので、お気軽にどうぞ。
さて、本日は、どうしても根強い誤解についてです。
「説明しているつもり」が生む構造的リスクとは
キャスティングや稽古の初期段階で、「うちのタレントには、ちゃんと説明しますので」と言われることがあります。
しかし、その説明は 誰のための説明なのか。ここが大きな分岐点になります。
もちろん、誰しも悪気はありません。多くの場合良かれと思ってということも多いでしょう。
制作側が必要とする説明と、出演者が安心して判断するための説明は一致しているとは限りません。
残念ながら、俳優が演技に夢中になっていて、ついその前後聞き逃していると言うこともあり得ます。
説明の質と流れが整理されていないと、“説明したつもり”のまま重要な点が抜け落ちてしまうことがあります。
ここにも、第三者の視点が有益になるのではないでしょうか。
説明する側と守る側を分ける必要性
マネージャーや演出家が出演者に直接説明する現場は少なくありません。
その善意は確かに貴重ですが、説明する側と守る側が同一人物になることで、構造上の曖昧さが生まれることがあります。
確認しすぎ位でちょうどいいと言うような場合もございます。
俳優が本音でYes/Noを選べる環境は、
第三者が介在し、情報を整理し、選択肢を提示することでようやく成立します。
その役割がインティマシー・コーディネーター(ディレクター)です。
同意とは「紙にサイン」ではなく進行そのもの
インティマシーを含むシーンで必要なのは、
同意書を渡し、署名をもらって完結するやり方ではありません。
もちろん言語化して、言葉にして、見えるようにする事は重要です。しかし
同意は、稽古や打ち合わせのプロセスの中で育っていくものです。
どの段階で説明があったのか。
誰から説明を受けたのか。
選択肢はきちんと提示されたのか。
断りやすい空気は存在していたのか。
こうしたポイントが曖昧なままでは、俳優の判断は必然的に制限されます。
曖昧だからこそ、気を使いすぎてしまう、つい遠慮してしまうということもあるでしょう。演技や演出邪以前に、(ご本人に自覚がなかったとしても)気が散ってしまうのです。
“断りにくい構造のまま進む”ことこそ最大のリスク
出演者は、説明そのものより説明の受け取り方と構造に敏感です。
どれほど丁寧に説明したつもりでも、
構造的に断りにくい状況が残っていれば、同意の成立には至りません。
後から言った、言わない、というのが一番困ります。
現場で実際に起こるトラブルの多くは、
「説明はしていた」という認識と、
「説明を受け取れていなかった」というギャップから生まれています。
多くの場合、悪意はなく、半ば事故のような形で起こります。例えば、急いでいる時、締め切りが近い時、経済的なストレスを抱えている時…また体調不良なども重なり、意図しないミスコミニケーションが発生します。だからこそ二重、3重の仕組みが重要になるのです。
俳優が安心して選択できる環境をつくる
インティマシー・コーディネーター(ディレクター)は、
演技を制限する立場でも、演出の流れを止める存在でもありません。
演出・意図に沿った導線を整理し、
俳優が集中できる構造を整えることで、
むしろ作品のクオリティを引き上げる立場です。
説明の前提を整えること。
動きを整理しながら、さらに必要な情報の流れを整理すること。
振り付けを使い、選択肢を見える形で提示すること。
この積み重ねが、誠実で信頼できる現場を生み出します。
ご相談について
台本段階からでも、稽古途中からでもご相談が可能です。
事前準備で整えられる部分が大きく、
早い段階でご連絡いただくほど、現場のスムーズな進行に寄与できます。
お問い合わせはプロフィールリンク、またはDMからどうぞ。
他にも記事を共有しております。お役に立てれば幸いです。