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ミュージカルやオペラで「ちょっと動いてみよう」が続くと、なぜ現場が消耗するのか

なかなか情報解禁が遅いめの海外との共同作品もありまして、具体的なお知らせが少ないのですが、また仕事の性質上、現場の写真などは少なく…こちらのブログで私の考えやアドバイスを参考にしていただければと考えております

ミュージカルはオペラでも、キスシーン、ハグ、それこそそのシーンって実はありますよね?

しかも歌ったり、踊ったり、汗をかいたり、手を繋いだりすること、当たり前になっている…また文化的にもいろいろな衣装であったり、着替えの都合などもあるので、ついついバウンダリーが緩まってしまっているかもしれない場面もあるのではないでしょうか?

ミュージカルやオペラで「一度合わせてみよう」が続くと起きること

ミュージカルやオペラ、音楽劇の稽古場では、
「一度合わせてみよう」
「ここ、軽く触れてみて」
という判断が自然に行われます。

音楽が流れ、動きが入り、歌と演技が同時に進む中で、
まず全体を通してみたい、という判断自体はごく普通のものです。

ただ、その判断が整理されないまま続いていくと、
現場には少しずつ負荷が溜まっていきます。

それこそ、先輩、後輩同士であっても、友達同士だっても、なんとなく言い出しづらい、どうにも人間関係があるから、言葉にはしづらいと言うこともあります。

音楽作品は「同じことを繰り返す」前提で作られている

ミュージカルやオペラは、
同じシーンを
同じタイミングで
同じ精度で
何度も繰り返すことが前提の作品です。

本番だけでなく、
オーケストラ合わせ
場当たり
ゲネプロ
そして複数回の公演。

そのたびに
動きや接触の条件が変わる状態が続くと、
俳優や歌手は毎回、無意識の調整を求められます。

結果として起きるのは、
音楽や表現に集中しきれない状態です。

後からやっぱりキスは嫌だった、あんなにくっつかなくても良いはずだったのに…というようなお声はなかなか日の目を見ることがありません。

接触やキスは感情以前に「動き」として整理が必要になる

キスシーンや身体的接触、
下着や身体上部の露出を伴う場面は、
感情表現として扱われがちです。

しかし音楽作品では、
それらはまず
動き
タイミング
距離
角度
呼吸
として整理される必要があります。

アクションシーンと同じように、
安全性と再現性が確保されて初めて、
表現として積み上げることができます。

正しく、よりかっこよくする

もっと官能的にする

安全だけれど、ハラハラドキドキお客さんがするようなシーンにしたい…

このような演出の希望や演技プランとすり合わせていくことが実はできるのです。

「その場で確認する」判断が続くと起きる消耗

「じゃあ一度やってみよう」
「ここは本番で変えるかもしれない」
という言葉が続くと、
俳優や歌手は常に修正を前提とした状態で動くことになります。

それは、
安心して任せられている状態とは異なります。

むしろ、
毎回気を張り続ける状態を生み、
長期公演では確実に消耗につながります。

また、親しい仲だからこそ言い出しにくいということも。

実際に同じ先生の一門であるからこそ、何年も気まずかったという例もあります。

また、年齢によっては、特にミュージカルなどですが、どうしてもグルーミングを疑われる可能性も。これは大げさに聞こえるかもしれませんが、人権やバウンダリーの感覚を2026年にアップデートした時、どうしても避けて通れないものだと感じます。

実際、私がニューヨークでの研修に入っていた時、多くのオペラやミュージカルで活動している俳優、演出家、アクション監督たちも同級生にいたのですが、皆悩んでいました。

何より、イタリアのオペラの演出家も、そういった配慮がまだ足りず、私の同級生もなんとかして、こういった業界の関連を変えようと、奮闘しています。

専門家が入ることで整理される判断がある

インティマシー・ディレクター(コーディネーター)が関わることで、
すべてを細かく固定するわけではありません。

どこを固定するのか
どこに選択肢を残すのか
どの段階で合意を取るのか

その判断軸を整理することが役割です。

結果として、
俳優や歌手は音楽や役に集中しやすくなり、
演出や音楽の意図も再現されやすくなります。

また、照明や音響、衣装との兼ね合いもすり合わせておくことで、十分にその効果が発揮されます。

音楽作品だからこそ「確認の仕方」が重要になる

ミュージカルやオペラでは、
一度の判断が、その後の全公演に影響します。

だからこそ、
「とりあえず合わせてみる」を繰り返すより、
必要な部分を整理し、
安心して積み上げられる環境をつくることが、
結果的に現場を前に進めます。

インティマシー・ディレクター(コーディネーター)は、
そのための専門職です。

他にもこのような記事を公開しております。

歌やダンスの邪魔をするものではなく、より注力してもらうための職業です。

ご参考になりましたら、光栄です。

稽古場の会話は“同意”にならない:演出と俳優のためのリスク構造と安全な進行設計

Kaoru Kuwata

演技指導歴20年以上。ムーヴメント専門家・アレクサンダー・テクニーク指導者としても、プロの俳優や歌手、ダンサーの身体表現を幅広くサポート。 現在は、ニューヨークでの実地研修を経て、IDC認定インティマシー・コーディネーター(ディレクター)としても活動中。 舞台・映像・教育現場など、多様な現場における“演出の意図”と“俳優の安心”を両立するため、動きの整理と振付を通して現場を支えています。 ブログでは導入事例や現場での変化も発信中です。 映画監督・演出家・俳優の皆様に向けたお役立ち情報をシェアしています。現場に必要かどうか、まずはご相談ください。

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