Q1 自分の演出の邪魔をされたくない気持ちがあります。インティマシー・ディレクターやコーディネーターを頼んでも大丈夫でしょうか?正直、俳優とのやりとりや演出の解釈について、口出しされたくないです。
A1
率直な視点を共有してくださりありがとうございます。
確かに、ご自身の作品に口出しをされるような印象を現時点で持ってる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、インティマシー・ディレクターやコーディネーターの仕事は、現場で、誰もが極度のストレスに置かれたり、不必要な誤解を招いたり、疑心暗鬼にならない方法や手順で、演出の効果をより際立てたり、演出の意図を実現可能なものに近づけるためのご提案をしつつ、一緒に作品を作るために工夫していくことです。
あくまで仕事の中心は、親密表現やセンシティブなシーンのうごきの整理であったり、振付を提案したりすることですから、演出を否定するようなこともありません。逆に、演出の狙いがより際立つご提案もできるかもしれません。また演出家の許可なく、演出を変えるような事はありませんので、一緒に協力して、より作品を豊かであったり深いものにしていければ幸いです。
ご自身のビジョンを具現化していく照明家や楽曲提供のミュージシャン、ご自身の作品に必要な アクションの先生を雇うような気持ちでご相談いただけると、スムーズです。
Q2 出産シーンがあるのですが、これもインティマシー・ディレクターやコーディネーターを入れるべきでしょうか?
A2
インティマシー・ディレクターやコーディネーターを入れないと、出産シーンの撮影や舞台作品 での表現ができないということはありませんが、感じ方や解釈には、家族や親しい仲であっても 差があります。
風通し良く、コミュニケーションを取るためにも、不要な心配を減らす意味でも、ご相談いただければ、いくつかのご提案をさせていただきます。医療監修とはまた異なった視点にはなりますが、同じように作品を健全なプロセスから生み出すという意味では近いです。
Q3 いわゆるゲイの性愛表現や親密シーンがあるのですが、当事者に聞くより、インティマシー・ディレクターやコーディネーターを頼んだほうがいいですか?
A3
当事者性も重要で、まだ日本ではディスカッションの余地があると思います。ただインティマシー・ディレクターやコーディネーターの仕事は、そのシーンに適した振付を提供することや、演じ手に負担のうごきをし、視覚的な効果やシーンの狙いをサポートすることです。
作品中のジャンルや役(キャラクター)の属性や個性、自認等にかかわらず、接触やプライベートゾーンに関連する場面だからこそ、客観的な立場から見られるインティマシー・ディレクターやコーディネーターにご相談ください。誠心誠意、対応させていただきます。
Q4 舞台の制作をやっています。次の作品で、気になるシーンがあり、相談したいのですが、スタッフを1名増やせる予算があるかどうか心配です。
A4
ちょっとでも気にかかるシーンがある場合には、いちどご相談ください。
打ち合わせの回数、稽古の日数、リハーサルの立ち会い、公演期間中の立ち会いなども、本当に様々ですので、何らかの提案ができますと嬉しいです。 ときには、地方公演などの劇場が変わる際に調整するなども必要が出てくる場合もありますが、シーンの長さや登場人物の人数、必要とされるマスキングなど、多様ですから、お早めにお話をお聞かせくださると嬉しいです。
Q5 俳優は特にインティマシー・ディレクターやコーディネーターと入れなくても構わないと言っているのですが、問題あるでしょうか?
A5
その俳優の方の発言の意図や文脈がわからないので判断しかねますが、何らかの身体的な接触やセンシティブな表現、身体の1部の表出などが伴う場合には、短い期間になったとしてもご相談いただけるとうれしいです。
インティマシー・ディレクターやコーディネーターがいなくて構わないと発言した俳優の方がどういう意図だったか、またどういった前後関係でその発言につながったのか分かりかねますが、専門家の導入は、演じ手だけでなく、スタッフ全員のより円滑なコミュニケーションにも役立ち、そして観客にも影響があるものとして、舞台でも映像でも、欧米では主流になりつつあります。
Q6 ミュージカルで、子どもとちょっとハグしたり、腕を組んだり、軽いキスのようなシーンがあります。こんな時にも、振り付けは必要でしょうか?
A6
お尋ね下さって、ありがとうございます。感じ方は本当に人それぞれですので、ご相談いただけるとうれしいです。
また、みなさんがプロで極めていらっしゃる専門に長けた、善意に満ちた方々でいらっしゃっても、子どもにはその判断がつきかねる場合もあります。さらに「子ども」とはいっても個人差も非常に大きいです。
うごきを整理するだけでも安心できたり、専門家が間に入ることで、まだ言葉になっていない感覚や心配を表現しやすくなるのは、子どもも大人も同じです。
演技をより際立たせるため、演出の効果をより効率的にするために、ご相談ください。
Q7 うちの事務所の俳優/歌手本人が、インティマシー専門家を希望しています。打ち合わせやリハーサルに同行してもらう事も可能でしょうか?
A7
もちろんです。契約上の確認もありますので、個別で対応させていただきます。
所属している方が、新しいジャンルやこれまでとは、毛色の異なった作品に挑戦しやすく準備を整えていくためにも、専門的な視覚効果を生み出す振付がお役に立てれば嬉しいです。
Q8 オペラの演出でも、インティマシーディレクター/コーディネーターは必要ですか? 映画のようなアップもないので、構わないと思うのですが…
A8
大掛かりなオペラ作品や、ガラコンサートなどであっても、何らかの身体的な接触や親密表現、センシティブなシーンにはインティマシー・ディレクターをスタッフの一員に加えてくださると嬉しいです。
オペラにもアクションのシーンがあれば、アクションの先生を、ミュージカルの喧嘩のシーンがあれば、もちろんアクションやパルクールの先生をお願いしていると思います。その仲間と考えてください。歌唱や演技、そして演出の邪魔にならない振付とうごきの整理を提案させていただきます。 昨今、アメリカだけでなく、ヨーロッパの劇場でも、インティマシーディレクターのオペラ作品への参加が増えています。弊社の仲間であるIDC認定のインティマシー・ディレクターも歌劇場で活躍しています。
Q9 いわゆる2.5次元の作品なですが、男性同士なので心配はしていません。それでも相談すべきでしょうか。
A9
インティマシー・ディレクター及びコーディネーターの仕事は、性愛表現だけにとどまりません。またいわゆるシスジェンダー、異性間に限ったのでもありません。
身体的に同性同士であるからといって、みなが作品に必要な肌の露出や接触を快諾するとも限りません。
ケンカなどのシーンには殺陣やアクションの先生を、ダンスにはダンスの先生を入れているはずですから、その仲間として捉えてくださると間違いがありません。
アクションやダンスのシーンで、身体の性別によって先生や専門家、振付を入れない事は無いはずです。その作品の世界観を邪魔しない振付を工夫していきますので、ぜひご相談ください。
Q10 そもそもプロの俳優になった時点で、ある程度のヌードや濡れ場は覚悟が決まってたはずだから、なんだかめんどくさいです。
A10
ご意見を共有していただきありがとうございます。
確かにそういった前提が目立っていた時代もあったと思います。しかしながら、価値観は本来多種多様であり、家族や親戚、親しい友人同士であっても、個々の事情や固有の感覚は無視できません。
そもそも「仕事の同僚」とプライベートゾーンに関わる接触や露出というのは、センシティブであって当然、とも捉えられます。
また現実の世界であれば、個々の判断に委ねられているいわば「公」ではない部分を、共有すると言うのは一種特殊ともいえます。だからこそ、私たちのような専門家の言語化や振付をお試しください。 「スパイシーなシーン」のうごきの度合いも、演出家/監督と演じ手と相談しつつ、スタッフの方の協力を得て進めて参ります。